今そこにある危機
先日、タイミングベルトの交換をしていたカングーですが
全部組んだ所でエアコンのコンプレッサーが機能不全なのが分かりました
元々、ユーザーからオルタネータープーリーを見といて欲しい旨と、エアコンがガス漏れしているようだと、点検の指示をうけていました
しかし、このクルマは長くディーラーでメンテナンスを受けていることも既に対策品でした。
未対策のプーリーは、似ていながらもプリーとインナーホイールの間にゴムの層があって、そこに亀裂が入ってグルグル回るようになって不動になるというトラブルがあるようです。
こちらは安心でした
しかし、コンプレッサーはダメでした
リビルドコンプレッサーが届いて作業します。
真っ黒なのはシャフトシールからガスが漏れて汚れてしまったようです。
ではなぜ、コンプレッサーが傷むかと言うと
コンプレッサーの取り付け位置のすぐ下にはクロスメンバーがあり、タイミングベルトを交換するために上げたり下げたりしている間に
コンプレッサーのプーリーが挟まって、シャフトにエンジンの重さがかかり、シャフトが曲がるという事ではないかと、イナリくんは推測します
その証拠にプーリーには当てたと思しき後が結構ありました。
しかし….
この後、MPIにとって経験をしたことが無いような事件が起きるのです
もう、ゴールに向かって突き進んでいて、殆ど出来上がっていた、ように見える状況で
それまではイナリくんが組み付けていて、彼が別の用事をするためにクルマを離れ
僕は、事務所から何の気なしに出てきて、ユーザーに納期などを報告するためにエアコンの効きを見ようとしたときでした
エンジンをかけて少しすると、何とも言えない音
間もなくしてエンジンがストール。
再度クランキングするもエンジンはかからず
そこに戻ってきたイナリくん。
彼はなんと…再度点検のためにクランクボルトを緩めてあると…
ピストンがバルブを突いたかもしれない
大変な事が起こり、急遽、圧縮を測る事になり
コンプレッションゲージを用意したり、スパークプラグを抜いたり
スローモーションのように見えます
一縷の望みを賭けて臨むコンプレッションテスト
1番 8kg
2番 0kg
圧縮がありません
後の事はいまいち記憶にありませんが、大変な事になった事実だけがここにあります。
自動車の内燃機は、シリンダーヘッドにあるカムシャフトを回すギアとクランクシャフトが1本のベルトでつながっていて
クランクが2回転する間にカムシャフトは1回転して、バルブとピストンの位置は保たれています。
つまり、ピストンが下がる時に吸気バルブが開いて吸気して
次にピストンが上って来る時に両方のバルブは閉じて、圧縮されるわけです。
しかし、カムとクランクの連携が悪いと吸気、または排気バルブが開いている時にピストンが上がってしまうと
ピストンとバルブが衝突してバルブを曲げてしまうのです。
タイミングベルトが切れる と言う現象はいわばこれでして、この故障が起きてしまうと自動車の存在意義の根幹を揺らがす事になりかねません
そのためにMPIに入庫したのに…
嘆いていてもしょうがないので
次のアクションの打ち合わせです。
その日はオークションの開催日だったこともあり、自動車1台をまるまる買って、シリンダーヘッドを外して使うという方法も議論されました。
シリンダーヘッドを外して、その中古のシリンダヘッドを多少直して取り付ける案です。
シリンダーヘッドを外す以上、ガスケット類の交換も必須です。
間もなくセリが行われますが、やはりこのカングーと言うクルマは古くなっても一定のニーズがあり買えませんでした。
翌日、どうせ外すなら今あるヘッドをオーバーホールしてみるのも良いのではないかと言う考えに至り
普段あまり取引の無い、専門の部品屋さんに問い合わせを出すと、中古の距離飛びカングーを買うよりは、わずかに高いくらい
の金額で部品が集まることが分かり、その方法で行く事になりました。
地獄にホトケとはまさにこのことです。
大変な事態は次回に続きます。