ポルシェボクスターの修理
先日電話で入庫の打診があったポルシェ987ボクスター。
これも何度か車検などを作業させていただいている車両ですが、故障らしい故障を出さず優秀なクルマでしたが、今回レッカーでの入庫となりました
訴えとしては、まず、オルタネーターランプが点灯した。それに呼応してパワーステアリングが効かなくなったと。
しかし走れそうなので、その後走行すると水温の上昇により停止せざるを得なくなった。
一見すると大変そうなトラブルですが、Eくんがベルト切れじゃね?の一言で、あーそうだね
となりまして、部品を見てそろったら午前中にでもこんこーんとやっつけちゃいましょうとなったのです
車両を見るとまあ、やはりベルトは切れたか外れたかでエンジンルームの中にくしゃくしゃになってありまして、部品をさっそく手配しました。
このファンベルト切れはとても危険で、クランクプーリーなどに巻き付いてロックしたりすると大変な事になります。
先のカングーなども致命的結果になる事があるので注意が必要です。
この987は幸いにも外れただけだったのでラッキーでした。
ドイツ車の多くはタイミングベルトを使わずタイミングチェーンを使うためにドライブベルトでパワステ、オルタネーター、エアコンコンプレッサー、さらにはウオーターポンプまで回します。
今回トラブルの元になったのは、1つだけ茶色ぽく変色したアイドラープーリーです。
全く手で回りません。ベルトでこすられて焼き付いて変色したのでしょう
他のプーリーも溶けたベルトがくっついてヒドイ状態です。おそらくすさまじい音も出ていたと思います。
何しろ一つベアリングが回っていないのに、無理やりクランクがベルトを回していたのですから
今回は各アイドラーとテンショナープーリーを交換します。しかし、手で回すとパワステポンプは少し音が出ています。コンプレッサークラッチも少し音がでているので、近い将来何かしらのアクションが必要かもしれませんね。
そして作業… みんなおとなしく外れてくれたと思いきや
真ん中のテンショナープーリーが外れません。
このプーリーだけ後ろからアタmが15mmのボルトで止まっていて、スパナでないとエンジンブロックに当たって入らないのです。
ここからが大変だった….
前から24mmのソケットがギリギリ入るので、1/2のスピンナーハンドルで回すのですが、ビクともしない。
15mmのスパナは長いと入らず、なかなか入れるのが難しい上に、スパナだから強いトルクをかけると口が開いちゃうのです、スタビレーの物なのに
一方、1/2のスピンナーにはさらに鉄管をかけて超ロング、超高トルク使用にして回します。
しかし…それでもビクともしません。
ドイツ車は、特にポルシェはネジロック、商標ですがロックタイトが大好きです。
あちこちに塗ってあります。964あたりだったかなあ、ドアのロックが嵌るストライカーと呼ばれる部品。ここにはT40のとかのトルクスだったり、トリプルスクエアなんて呼ばれる高耐久のボルトが使われているのですが、それらもスナップオンやマックツールのトルクスだと粉々に粉砕されちゃうですよ。回せても先端部分がねじれていくらも持たなくなったり、ドイツ車は、特にポルシェは狂暴なトルクと言うかネジロックで止まっているのです。
今回も明らかにそれです。
絶対一人でなんか取り外しできません。僕が15mmスパナを抑えてイナリくんが回します。
結局、スパナが負けて回りません。
そこで考えたのがボルトなりなッとなりを温める方法です。
バーナーを使うと他に影響が出るので、ヒートガンを使います
イナリくんが温め、僕が非接触温度計で温度を確認します。
130℃を超えたら回してみます
すると、ロックタイトが溶けるのか、わずかに回りました。
しかし、温度が下がると再びビクともしなくなります。
またまた炙って130℃
少し回る
温度が下がって回らなくなる
またまた炙って130℃…..
これを繰り返す事10数回、ついにその時は来ました。
勝利の鋼鉄!
やったぜ!
しかし喜んだのもつかの間
ボルト交換できないじゃん。
後ろにクリアランスがなさ過ぎて交換できないのです。
いろいろな事を考えましたが、正解はこのテンショナー本体がついた大きなキャリアごと外すのです
しかしこのフロントキャリアパネル。相当外すのが大変そう
左にコンプレッサー、真ん中にパワステポンプ、右にオルタネーター、ウオーターポンプ
全て外さないと出来なさそうです。
スゴイお金をかけていっぺんにリフレッシュすることもできますが、経済的負担は相当な物です。
どうしたもんじゃろなあ?
結局ボルト交換をあきらめて、再利用することにしました。
残念ながらボルトは置き去りです。
再び元気に回るドライブベルト
それぞれに負荷をかけて
結局一日仕事になっちゃったとさ