ランチア V6の整備 その1

ランチアと言えば多くの人はデルタインテグラーレやストラトスを思い起こすでしょう
しかし、ランチアはセダンを多く輩出している事でも知られています。僕もテーマに魅了されたうちの一人です

しかしこのクルマのオーナーはより愛が深く、何物にも代えられない存在なようです。
でも本当の愛車とはそんな物な気がします。
それは新車を契約する前から手放す時のリセールバリューを考えたり 信号で並んだらよりグレードど良い方に劣等感を感じたり
スピードや豪華さを競ったり、そんな空虚な事など全く意に介さない真のエンスジアストなのかもしれません。
こういったクルマに携われるようになったことのありがたさは、この仕事をしていてこの上ない幸せです。

しかし時間と言うのは残酷でどんなに美しい物でも劣化させてしまいます。
僕らは一生懸命、それに抗って整備を進めるのです

そしてこのクルマもまた恐ろしいまでに調子を崩してあれこれ大変な状況にありました。
まずはオイル漏れや点火不良などの基本的なところをタイミングベルトの交換と共に直します

いつの時でも存在感が別格のV6。でも166のそれとはそこはかとなく違うのですよ
ブローバイで汚れたスロットルボディも後で清掃しましょう

こういったブローバイホースはスーパー貴重品で、取り扱いには細心の注意を払います。

インテークパイプのラバーチューブも同じく超貴重品で、166の物とは大きさが違うのです。1つだけ完全に破れていましたが、他も含めて実に丁寧にヒートガンで一つ一つ炙りながら外すのです

作業はイナリくんが丁寧に行います

フューエルラインを取り外すのでフューエルキャップを外そうと、リッドを開けようとしましたが、開かないのでエマージェンシーロッドで引っ張ろうと思ったら、既に切れていました
…この時点で、このリッドは開かない物と勝手に勘違いして、コネクターに直にアクセスしてロックを開けようと努力しました。

これで7Vの電圧をかけてアクチュエーターを直接動かします

カッパはリッドを一度押すと開いて、もう一度押すと閉まる仕組みで、ドアロックをかけるとフュエルリッドにもかんぬきがかかり開かなくなるのですが
一生懸命開けようとしましたが、単純にリッドのオープナーが硬いだけでした。

説明の為に開いた状態で見てみますと、これがドアロックをしていない状態

ドアロックをすると、このように棒が飛び出てかんぬきをするのです

走行している間にも作業は進み、奥のバンクのカバーを外そうとしている時に、ボルトに異変がありました。

ギタギタです。ここは位置的に難しい場所なので、こうなってしまったのでしょう。手持ちの中古と交換します。

黙々と作業を進めるイナリくん

カムカバーが外れるようです。

タイミングベルトもそろそろ架け替えの時期でしょう

ありがたい事にウオーターポンプからの漏水はありません。

タペットカバーを開けて、さっそくカムロックを取り付けた画

美しいシリンダヘッド周り。さすがワンオーナー車

しかしたった一つ、経験したことのない事が起きました。僅かにカム山が合わないのです。
それはずれて合わないのではなく、そもそもわずかに大きさが違うのです。

車体番号で調べると確かに166などのV6とは品番が異なり、ひょっとしたら本当にカムプロフィールが違うのかもしれませんが、問題はこれにぴったり来るカムロックツールが存在するのか?と言う事です。これに詳しいマーチンさんに問い合わせたところ、世界的に話題になったそうで、これに完全にフィットするロックツールは無いそうで、従来の3L用の物を使うそうです。
ちなみに合わないのはインテーク側だけで、エキゾースト側はぴったり合うのですねえ

これは工夫で乗り越えていく事になるのです。

全体が大変にキレイです。点火補正のカムアングルセンサーのシグナルローターも本当にキレイ。

次回に続きます。

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